アフリカ

2014年2月5日
*by: | *cat: 結婚

25歳のはじまりの日

おとうちゃんとむすこと暮らし始めてすぐ、アフリカに行きました。

ケニア、マダガスカル、おまけのタンザニアとカタール。
20日間の夏休み。

できたばかりの家族を置いて旅立つことに少しの迷いはあったけれど、
この目で見たものは私の血となり肉となり、むすこにも伝わるはず。
そう思って、キャンセルはしませんでした。

時間の流れが緩やかな旅でした。
3日目の夜に「もう1ヶ月くらいアフリカにいる気がする」と
思わず口にしてしまったくらい。

これまで、色々な国に行って、
雄大な自然や、何千年も昔に造られた遺跡、
想像をはるかに超えた文化・習慣・芸術に
心を動かされることがたくさんあった。

でも旅をする一番の目的は、いつも、今生きているひとの生活を見ること。

貧しいひと、豊かなひと、優しいひと、ずるいひと、
草原に住むひと、街に住むひと、言葉の通じるひと、通じないひと。

アフリカでもやはり同じように
明るく一生懸命に、ひとが生きていました。

そして今回は、ひとだけでなく、動物の生き様に触れることができました。
モンゴルで旅路を共にした馬とはまた違う、野生の動物。

アフリカに行こうと決めたのは、
物理的にも心情的にも一番遠い場所だと思ったから。
理由はそれだけです。

じゃあせっかくだから見ておこう。
そんな程度の気持ちで足を踏み入れたサバンナで
予想外に大きな衝撃を受けました。

動物が、あんな風におだやかに共生しているなんて知らなかった。
テレビや絵本や動物園で見る動物とは、全く違った。
「ライオン」「キリン」「シマウマ」と、
私たちがバラバラに認識している動物たちが一緒に生きている。
人間の乗った車を気に留める様子もなく、ゆっくりと。

2頭のライオンが悠々と歩く様子を、
シマウマの群れがじっと見つめている。
食べかけのヌーの隣で、ライオンの親子が仲睦まじく寝そべっている。
カバが昼寝をしている川には、脚を踏み外したヌーの死骸たち。

そんな光景を目前にして、「弱肉強食」という言葉に違和感を覚えた。
強いから、弱いから、というものではなく、
どの生物にとっても必要なこと。
ここでは、「みんなちがって、みんないい」が当たり前に成り立っている。
全ての死が、そのまま生につながっていた。

サバンナでも、町でも、たくさんの親子を見ました。
ゾウも、カバも、キリンも、マサイ族も、マダガスカル人も、
子どもを連れて生きていた。
路上で野菜を売りながら、お母さんが赤ちゃんにお乳をあげていたり。
屋台の前で遊ぶ幼い姉妹に「ママは?」と聞くと、
屋台のお姉さんが「あの人よ」と遠くを指差してくれたり。

仕事をしながら子育てをすることが、
難しいことではなく当たり前のことに感じられました。
お母さんたちのあたたかくて力強い笑顔に励まされ、
私も”母”になろうと改めて思いました。

25歳の誕生日に、バオバブとこんにちは。
どっしりと、でも柔らかく、広野にたたずむバオバブ。
明らかに異質な存在だった。すごくへんな光景。
あのカタチ、他には無い。あの感じを覚えておきたい。
不思議なことが、この世界には本当にたくさんある。
一つひとつ、この目で見たい。
子どもたちに自分の目で見てほしい。

ビーチに寝転んで見上げた満天の星空とたくさんの流れ星、
悪路にハンドルをとられ、
必死で自転車をこぐ私に10分以上並走してくれた男の子、
1本4円で食べられる最高に上手い屋台の牛串、
拙い英語で一生懸命町中を案内してくれた背の低い青年、

ミネラルウォーターを買い忘れ、喉の乾きで眠れなかった辛く長い夜、
サバンナのど真ん中で薪を炊いてホットシャワーを提供してくれたこと、
「サラマー(こんにちは)」とすごい勢いで手をふってくれる子どもたち、

気温40℃の灼熱地獄の中、ラマダンのため一滴の水も口にしないカタール人、
財力と信仰心と美への欲求で造られたようなドーハの街、
真っ黒い衣裳の下にきらびやかなドレスを纏うイスラム女性、

全部、おもしろかった。

滞在中に車が5回も止まりました。
水が漏れたり、タイヤがパンクしたり、
ガス欠になったり、エンジントラブルが起きたり。
皆、その場でバカっとボンネットを開けて自分で修理する。
口をつけてオイルを吸い出した時には、ちょっと目を疑った。

切った電線を手でつなげてエンジンをかけ、
ペットボトルからガソリンを吸い上げるペラペラの車、
8時発20時着と聞いていたのに10時発26時着だった
人が窓から出入りする程ぎゅうぎゅうの夜行バス。

もう、むちゃくちゃ。
むちゃくちゃに、全てが機能していました。

太陽が沈む時いつも、数時間後の日本に
心地よい朝の光を届けてくださいとお祈りしながら
空の色が変わっていくのを見ていました。
夜は暗くて寒くてこわいってこと、また思い出した。
太陽ってすごい、ありがたい。

行く前は、アフリカがどんなところか想像がつきませんでした。
治安悪い、黒い、暑い?広い?汚い?こわい?
全部正解で、でもそんなんじゃない。
同じです。私たちと。
だから、あぁまたいつでも来れる、と思った。
アフリカが遠くなくなった。

サバンナの地平線に沈む夕陽を見ている時、
隣にいた真っ黒な肌のおじさんに「結婚しているのか」と尋ねられた。
「夫とむすこが日本にいる」と答えた時、なぜか涙が出た。
私が初めて母を名乗った瞬間でした。

アフリカにいる間、
おとうちゃんはずっとそわそわイライラしていて
よくメールでケンカをしました。

旅行に来てこんなにも帰りを待たれるのは初めてのことで、
家族ができたことの重みとあたたかさを実感しました。

色々難しく考えたりしてしまうけど、
ただ単にアフリカに行きたかっただけ。
知らないから、遠いから。
そしたら動物が生きていて、ひとが生活していて、
色々なことを教えてもらった。
全部そのまま受け止めよう。
そんでここでがんばって生きていこう。
そんなことを考えながら、帰路につきました。

これまではフラフラの身体と荷物を抱えて一人で家まで帰っていたのに、
空港に着いたらおとうちゃんとむすこが待っていてくれた。

むすこはマダガスカル土産のキツネザルとタクシーブルースのTシャツを
今でも毎日のように着てくれていて、それを見る度に嬉しくなります。

子どもたちには、世界は広くて、あなたは自由なんだと教えたい。
何かしたい、どこかに行きたいと思った時、
躊躇せずに一歩踏み出せる人になってほしい。

毎日の生活の中で体現できているかと言われると全く自信がないけれど、
今のところ、これが私の一番の教育方針です。

そんな私の隣で、おとうちゃんはよくむすめを抱きしめながら
「アフリカ行くとか言いだしたらどうしよう!
 おとうちゃん付いて行くわ!」
と言っています。
家族っておもしろいです。

2014年2月5日(水) おかあさん

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