むすこと馬

2015年8月28日
*by: | *cat: すきなこと, 子供たち

1年生になったむすこは、夏休みに3泊4日のポニーキャンプに参加しました。

はじめて訪れる土地で、はじめて会う年齢も出身地もバラバラの人たちと、
はじめて触れる馬との生活。

さすがに躊躇するかと思いきや、何度か話をするうちに「いく!」とすっかり乗り気に。
生まれつきの人なつっこさに保育所での合宿経験が加わって、もう怖いものなしです。

 

私にとって大切で特別な存在である馬。
いつかむすこにも馬に乗ってほしいと彼の母親になってからずっと思ってきました。
こんなにもはやく現実になるなんて。

嬉しくて嬉しくて、その日を迎えるまで
きっとむすこより私の方がキャンプを楽しみにしていたと思います。

 

生後2ヶ月の末っ子も含め家族全員で車に乗り込み、いざ長野へ。

乗馬クラブに着くと、むすこは別れを惜しむそぶりなんて全く見せず、
すぐに大きなリュックを背負って
スタッフのおにいさんと部屋に着替えに行きました。

乗馬レッスンは2日目からですが、
さっそく馬房の掃除や餌の準備など馬の世話がはじまります。

おとうちゃんは

「おとうちゃん子どもの時、絶対こんなん行けへんかったわ」

としきりに感心していました。

 

キャンプの間、私たちは乗馬クラブから車で15分程のところにある宿に泊まり
長野で4日間を過ごします。

私たちも、友人が働く別の牧場で数十頭の馬と会うことができました。
おとうちゃんははじめて引き馬に乗り、
むすめたちは少しこわがりながらも馬の鼻筋をなでたり草をやったり。

小さい子ども3人を連れていたので
乗馬は断念したけれど、家族と馬の距離が縮まっただけで私は大満足でした。

「はじめて馬をかわいいと思った」
というおとうちゃんの言葉が、とても嬉しかった。

「おにいちゃん頑張ってるかな」
「おにいちゃん、馬と仲良くなったかなぁ」

と話しながら、いよいよ4日目の朝を迎えました。

 

ポニーキャンプ最終日。
朝から検定が行なわれ、その様子を家族も見に行くことができます。

乗馬クラブは山の上にあり、
馬場(ばば)の向こうには広い空と美しい山並みが広がっていました。

小雨が降る中、レインコートを来て名前を呼ばれるのを待つ子どもたち。

初心者コースでスタッフがしっかりついているとはいえ、
むすこが1人で馬に乗ると思うと私も少し緊張していました。

おとうちゃんがあまりにもそわそわしていて笑けたり
退屈してぐずる次女を必死で泣き止ませたりと落ち着く間もありませんでしたが、
ドキドキしながらむすこの番を待ちました。

 

馬は、賢く繊細な動物です。
好き嫌いがはっきりしていて乗り手によって動きが大きく変わるし、
はっきりとこちらの意志を伝えないと、思い通りには動いてくれません。

さぁ、茶色いかわいらしいポニーは、むすこの指示通り走ってくれるのか……

少しバランスを崩しながらも
ポニーはむすこを乗せて決められたコースをしっかりとたどりました。
ゴール位置で止まり、敬礼。

むすこがしっかりと手綱を掴み、小さな身体で裸の馬に乗っている。
見ているだけで胸に込み上げるものがありました。

もちろんまだ1人で馬を操れるわけではありません。
でも毎日の馬の世話や馬の背から見る景色は、
彼にたくさんのことを感じさせてくれたはずです。

 

家に帰ってきた夜、むすこは

「帰りたくなかったーーーもっと馬といっしょにいたかったーーーー」

と何度も何度も叫び、わんわん泣きながら眠りにつきました。
腕の中には妹たちのおみやげに買ってきた馬のぬいぐるみ。

正直なところ、むすこがそんなに馬を好きになって帰ってくるとは思っていませんでした。
私に大切なことを教えてくれた馬が、
むすこにもきっと色んなことを教えてくれている。
そのことが、心の底から嬉しいです。

 

今となっては笑い話なのですが、
検定の間もその後迎えに行った時も
むすこがあまり誰とも喋らず1人で行動していたので
私たちは関東人のノリにうまく馴染めなかったのではないかと心配していました。

帰りの車で「来年も行きたい?」と聞くと
「来年も行く。ぜったい行く。」
と力の込もった声が返ってきて、おとうちゃんも私も一安心。

 

来年の夏、また行こうね。

むすこがお土産にとくれた馬のピンバッヂは、私の宝物になりました。

2015年8月28日(金) おかあさん

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